初回投稿日2020年09月27日
最終更新日2023年08月14日
基礎知識編 バッテリーに関する事
サブバッテリーシステム製作にあたって一番時間がかかったのはバッテリーや配線などの基礎知識がなくネットなどで調べる事でした
一回で正解にたどり着くことができなくて大変苦労しましたので調べた事を整理してみました
バッテリー選び
バッテリーの種類
鉛バッテリーとリチウムイオンバッテリー
リチウムイオンバッテリーは
・小さく軽い
・電圧降下が鉛蓄電池に比べて少ない
など良いとこだらけですが今のところ高額な為使えません
安価に手に入る鉛バッテリーを使います
スターター型バッテリーとディープサイクルバッテリー
スターター型バッテリー
主にエンジンの始動用に使われてます
ディープサイクルバッテリー
ヨットや船外機などに使われてます
車中泊などは充電が40%〜75%位で使うことが多いです
スターター型バッテリーは75%前後で使用する設計で向いていません
100%放電しても大丈夫なディープサイクルバッテリーを使います
開放型バッテリーと密閉型バッテリー(メンテナンスフリー)
開放型バッテリー
内部のガスが漏れる・液の補充が必要
密閉型バッテリー
ガスの漏れがない・メンテナンスフリー
車内に設置するのでここは密閉型バッテリーを選択します
結論として鉛バッテリー・ディープサイクル・密閉型
必要なバッテリー容量の計算
日本の場合バッテリー容量の単位はAh(アンペアアワー)です
Ah = A(アンペア) × h(時間)
電流の大きさ 電流を流した時間
100Ahの容量は50Aであれば2時間流せるという意味
ざっくりした計算ですが12Vのバッテリーの場合
100Ahの容量のバッテリーであれば
12V × 100Ah = 1200Whとなり
100Ahの容量は600Wの機器が2時間使えるという意味
しかしバッテリーを100%から0%まで使うことはありえません
経験上ソーラパネルや走行充電でフル充電しても75%程度です
充電量が45%位になるとインバーターや電子機器は動きません
エンジンを止めている夜間に容量の30%で間に合う事が必要です
(75% ー 45% = 30%)
必要バッテリー容量(Ah)
=使用機器合計ワット数(W)÷12(V)× 使用時間 ÷ 0.3
40Wの機器を5時間使用する仮定で計算すると
=40W ÷ 12V × 5時間 ÷ 30% × 100
=55.5Ah
当然いつもフル充電ではないのでこの2倍以上の容量が必要です
2倍で111Ah以上のバッテリーが必要ということになります
電子レンジを使う場合には別の要素があります
出力が700Wの電子レンジは消費電力は1200W
前後です2分で40Ahでなんとかなりそうな感じが
すると思いますが違います
電子レンジを最大出力で使うと100A近く流れます
バッテリー電圧が一気に下がりインバーターが低電圧エラーになります
バッテリーを並列にして1つのアンペア数を下げます
キャンピングカーは標準2個で、3個あると1つで30A位です
いつも充電が満杯ではないので5個積んでいる方もいました
バッテリー容量の規格
良く使われている鉛蓄電池の規格
日本のバッテリーの容量表示はAh(5時間率)です
JIS規格によると
満充電した蓄電池が5時間で10.5Vまで供給可能な電気量
(温度が25℃±2℃)
ヨーロッパのEN規格によるとAh(20時間率)です
満充電した蓄電池が20時間で10.5Vまで供給可能な電気量
SAE規格ではRC(リザーブキャパシティー)(分)
満充電から25Aの負荷をかけて10.5Vになるまでの時間(分)
※簡易計算ですがAhへの換算は
Ah = RC(分) × 25A ÷ 60(分) でできます
蓄電池は時間をかけて放電した方が電気量が大きくなる特性があり
同じ容量のバッテリーでも容量の表示は下記の順に大きくなります
Ah(20時間率)> Ah(5時間率)> Ah(リザーブキャパシティー)
リチウムイオンを使ったポータブル電源の表示にもAhが使われてます
こんな表示の場合 120000mAh / 444Wh 3.7V
① 120000mAh = 120Ah です
② 同じ120AhでもWhに換算すると
リチウム蓄電池 440Wh(120Ah × 3.7V)
鉛蓄電池 1440Wh(120Ah × 12V )
リチウム蓄電池は製品により電圧が違い単純に比較できないので注意が必要です
※リチウムイオン蓄電池は鉛蓄電池と比較して電力消費に伴う電圧降下が小さく使い切りやすい利点があります
ACデルコ製マリンバッテリー
サブバッテリーシステム製作の条件 鉛・デイープサイクル・密閉
この条件に合っていて評判が良いバッテリーで私が使用しているのは
ACデルコ社製のマリン用メンテナンスフリーバッテリーです
このバッテリーで1日40Wで5時間の条件に合うものを探します
海外メーカーなので規格の表示が日本製と違いAh(20時間率)です
単純に日本メーカーのAhとは単純比較できないようです
24MFで 80Ah(20時間率)
27MFで 105Ah(20時間率)
この数字で決めるのは怖いのでカタログ数値から計算をしてみます
規格表のリザーブキャパシティー(分)から簡易に計算してみると
24MF 25A × 125分 ÷ 60分 = 52.1Ah
27MF 25A × 160分 ÷ 60分 = 66.7Ah
40Wで5時間機器を使うにはバッテリーは
ACデルコ製であれば27MFが2個は必要という計算になり
3個以上であればもっと安心という事です
バッテリーの充電はバッテリーの数が大きく影響します
キャンピングカーなどのバッテリーの充電で話題になるのがソーラパネルや走行充電器の出力〇〇ワットなんですが、それは水道で例えれば水圧の話なんです
水圧が低ければ風呂の水をためるのに時間がかかってしまいますから重要ですね、でももう1つ水道の蛇口を全開にするかどうかが大きく関係しますよね
バッテリーを並列接続で1個⇨2個⇨3個と増やしながら実験しましたが増やすごとに充電のアンペア数が2.5A位増えました蛇口を開いていく感じですね、化学反応で充電されるのでスピードは限界があるようです、バッテリーの数を増やさない限り発電能力を増やしても充電量には限界があるようです
標準的なキャンピングカーは300Wのソーラパネルと走行充電で発電は十分なんですがバッテリーが2個しかなく、当然充電が足りないのでキャンプ場の電源サイトか電源付きのRVパークに泊まることになるみたいですね
バッテリーの接続
並列と直列
バッテリーの接続は「並列」と「直列」があります
直列につなぐと電圧が変わります(2個で24V)(3個で36V)
並列につなぐと電圧は変わりませんがバッテリー間に循環電流が流れ
電力消費とバッテリーの劣化を招きます
通常は電圧の変わらない並列につなぐ場合が多いです
![並列と直列](https://kimama-rakutabi.com/wp-content/uploads/2019/08/-e1574414371323.jpg)
並列と直列
並列接続の注意点
並列接続の場合はバッテリーの接続端子の場所により配線抵抗に差が出て電圧に差が出るので注意が必要です
循環電流とは
循環電流のイメージ
循環電流はバッテリー間の起電力(電圧)の差によりバッテリーの中を流れ
「電力の消費」「バッテリーの劣化」がおきます
![循環電流イメージ1](https://kimama-rakutabi.com/wp-content/uploads/2020/09/221F4A84-7B98-4BC7-9078-D0D8E514C4D6.jpeg)
循環電流イメージ1 起電力1>起電力2の場合には矢印方向に循環電流と充電電流が流れる
![循環電流のイメージ2](https://kimama-rakutabi.com/wp-content/uploads/2020/09/564B9E9D-1CA9-4A55-89C7-9B27E38D3AF3_4_5005_c.jpeg)
循環電流のイメージ2 電圧差のあるバッテリー間には循環電流と充電電流が流れ時間経過と共に電圧の差が無くなり電流もゼロに近づく
参考:四国電力,四国研究所 「蓄電池直並列時の特性および課題」
循環電流の大きさ
循環電流の大きさと消費電力を試算してみます
この計算式は循環電流だけの計算式です
・循環電流はバッテリー1→2→1→と循環する
・充電電流はバッテリー2で吸収され1には流れない
従って
バッテリー1から2へは循環電流+充電電流が流れ
バッテリー2から1へは循環電流のみ流れます
バッテリー1の電圧を13.0V 内部抵抗0.01Ωと仮定
バッテリー2の電圧を13.3V 内部抵抗0.02Ωと仮定
バッテリー1、2間の回路抵抗は0.06Ωと仮定
アンペア(A) =電圧差 ÷ (内部抵抗の和+回路抵抗)
=0.3V ÷ 0.09Ω ≒ 3.3A
消費電力(W)=電流 × 電流 × 抵抗の和
=3.3A × 3.3A × 0.09Ω ≒ 1.0W
この場合最大1.0Wを消費し時間と共に0に近づきます
計算式からの推定で循環電流の消費電力が小さく
しかも時間経過と共に0に近づくので車中泊では
気にしないでそのまま並列にする
バッテリーの保護のため循環電流が流れない回路にする
どちらもありかもしれません
主な循環電流対策
ダイオードと切り替えスイッチによる循環電流対策
キャンピングカーなどで使われている方式です
出力は整流ダイオードを使って循環電流が発生しない様にします
充電はスイッチで切り替えて充電します
![ダイオードによる循環電流対策回路](https://kimama-rakutabi.com/wp-content/uploads/2020/09/08991FB3-A76D-4FE2-B859-5D378E631533.jpeg)
ダイオードによる循環電流対策回路、出力側にダイオード、入力側に切替スイッチ
バッテリー切替スイッチの例
簡易スイッチによる循環電流対策
自作のサブバッテリー システム3号機に使っている方式です
バッテリー切替器や家庭用スイッチだけを使う簡易な方法です
通常時の使用はバッテリーを切り替えて使い
大電流が必要な時や充電の時だけ並列にする
![切替スイッチによる防止](https://kimama-rakutabi.com/wp-content/uploads/2020/09/308AAD5F-385D-4359-BD1D-E85B2D7EAEC6_4_5005_c.jpeg)
切替スイッチによる循環電流防止
![3路スイッチと片切りスイッチ](https://kimama-rakutabi.com/wp-content/uploads/2019/08/IMG_1023-e1566883853951.jpg)
3路スイッチと片切りスイッチ
充放電コントローラー
自作の太陽光発電をされている方が作って特許を取っている物もある様です
ダイオードを組み込んだだけでは循環電流が発生します
充電の時にだけ充電側の切替スイッチを自動でオン
放電の時だけ放電側の切替スイッチを自動でオン
自動切替回路を追加すれば回路で失われる電力以外は解決です
(※充電が不十分というブログ記事もありました)
問題は自作する知識と技術と道具があるかで、私は諦めです
![充放電コントローラーイメージ](https://kimama-rakutabi.com/wp-content/uploads/2020/09/8E846AF4-25C8-4701-8B07-397EBE90BF2B.jpeg)
充放電コントローラーイメージ
まだ実験していない循環電流防止アイディア
![循環電流の計算式](https://kimama-rakutabi.com/wp-content/uploads/2020/09/545846B1-BDA5-4BF0-89D1-52E7F3DA014F_4_5005_c.jpeg)
循環電流の計算式
並列の回路の場合には入力電圧がバッテリーの電圧より高い場合
各バッテリーの端子間電圧=入力電圧 となります
内部抵抗の値が小さいので 端子間電圧=起電力 と考えますと
計算式から起電力の差が0になり循環電流は流れず
入力側から各バッテリーに充電電流だけ流れる事になります
これを利用して簡易に自動切り替えできないだろうかと考えてみました
プログラムタイマーを使った回路
ソーラーパネルで充電している場合ですが
曇りでも太陽光があればある程度の電圧が発生しています
プログラムタイマーで発電する時間帯のみ並列になる様にします
※車庫に入れたときや大雨で発電しないときが課題です
電圧感知リレーを使った回路
バッテリーの電圧を想定してセットしておきます
設定された電圧を超えた時にリレーが動作して並列で充電されます
通常バッテリーが12.5Vであれば12.6Vにセットするなどです
バッテリーが3個以上でも通常の4極リレーの追加で対応できます
![電圧感知リレーを使った循環電流対策](https://kimama-rakutabi.com/wp-content/uploads/2020/09/E9B5B303-57B3-4385-96A7-456233CFEF0A.jpeg)
電圧感知リレーを使った循環電流対策
バッテリー3個以上の場合の結線図
バッテリー3個以上の場合には操作性とコストの関係で
エーモン などのリレーを使った回路が良いと思われます
結線図が見やすくなるのでエーモン を例にしてみました
![リレーを使用した循環電流対策(入力側)](https://kimama-rakutabi.com/wp-content/uploads/2020/09/スクリーンショット-2020-09-28-15.05.13.png)
リレーを使用した循環電流対策(入力側)、出力側は全てにダイオードを入れるだけです)
電圧感知リレーの結線については間違いや規格変更の可能性もあり
ご自身で再度確認してから実施してください
最後まで見ていただきありがとうございます
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